子どものおねしょ(夜尿症)

お漏らし(昼間尿失禁)とおねしょ(夜尿症)

夜尿症とはお漏らしや夜尿症があるお子様のほとんどは病気ではありません。成長につれて膀胱や脳が発達することで自然と治るケースが大半を占めます。治療を何もしなくても毎年15%ずつ夜尿症は治るとされています。ただし、お漏らしや夜尿症が自然に治る年齢には個人差がかなりあります。そのため、お子様の気持ちや集団生活のために早く治したいということであれば、小児泌尿器科の受診が有効です。まれですが、お漏らしや夜尿症は基礎疾患や異常があって起こっていることもありますので、ご相談にいらした場合には最初に検査を行います。腹部と仙骨部の触診、検尿、尿流測定検査、超音波検査などの非侵襲的な検査ですから、お子様への負担もありません。なお、他の症状などから尿道狭窄や膀胱尿管逆流症(VUR)が疑われる場合には排尿時膀胱尿道造影(VCUG)など、侵襲のある検査を検討することもあります。
お漏らしや夜尿症を治すためのトレーニングには重要なポイントがありますし、タイミングによって逆効果になるものもあります。

膀胱のためられる量を徐々に増やすトイレットコントロール

赤ちゃんは膀胱のコントロールがまだできないため、無意識のままに排尿する反射排尿を行っています。トイレットトレーニングをはじめる時期になると、膀胱から来る情報を脳が感知できるようになります。尿を我慢する・トイレに行って排尿するといったことも、脳が膀胱から来る情報を感知した上でコントロールすることで可能になります。ただし、子どもの膀胱は未熟ですから、膀胱にある程度尿がたまった段階で無意識のうちに膀胱が収縮する無抑制収縮を起こします。これによって突然強い尿意を感じてしまうため、トイレに駆け込んでも間に合わないことがあります。無抑制収縮は小学校低学年頃まではよくありますし、大人でも神経因性膀胱などで起こる症状です。

子どもは、出かける前にトイレへ行くよう促しても「トイレしたくない」と言って、いざ出かけると数十分で「トイレに行きたい」と言い出すことがよくありますが、それはこうした無抑制収縮によって突然強い尿意に襲われてしまうからです。大人は尿意を感じてから30分や1時間程度は我慢できますが、子どもは尿意を感じた段階で膀胱がすぐに強く収縮しはじめてしまうため、我慢することが難しいのです。

トイレットトレーニングでは、尿意が起きたらそれが強くなり過ぎる前にトイレに行って排尿することを繰り返しながら、膀胱がためられる量を徐々に増やします。これによって膀胱の機能も安定に向かい、昼間のお漏らしも減少に向かいます。膀胱が強く収縮して漏れてしまう前にトイレに行って排尿する時間排尿は、30分弱のこともあれば、1時間以上大丈夫なこともあります。トイレットトレーニングで重要なのは、こうした時間にとらわれ過ぎないで尿意が強くならないうちにトイレに行って排尿することです。トイレで排尿できたという成功体験を積み重ねることで、1~3ヶ月ほどで効果が現れてくるケースが多くなっています。
トイレットトレーニングではお漏らしが治らない場合には、抗コリン剤の処方を行います。なお、膀胱を大きくする膀胱訓練は、お漏らしがある段階で行うと逆効果です。お子様の状態をしっかり把握して、タイミングを見計らってはじめることが大切です。

また、兄弟・いとこ・友達などと比較しない、お漏らしや夜尿をしても怒らない、いいところを積極的に見つけて大げさなくらいほめるといったことも重要です。家族全員が協力して行うことで効果も上がりやすくなります。

夜尿症を治すために

本人の気持ちが一番重要です

家庭でできる対策夜尿症が治るのは、機能の発達だけでなく本人がどれだけ「治したい」と思っているかにも大きく左右されます。モチベーションを保てるように周囲が協力することも必要ですが、生活習慣の改善や制限は本人に強い意思がなければ続きません。本人が「治したい」という気持ちがあるタイミングで治療を開始し、モチベーションが下がってきた時にはいったん中断して様子をみるなどが有効です。

神経系の発達・膀胱と脳の連携

神経系が発達して膀胱と脳の連携がうまくとれるようになると、睡眠中に尿が膀胱にたまると眠りが浅くなって目を覚まし、トイレで排尿できるようになります。こうした神経系の発達や脳と膀胱の連携は薬物療法では治せないので、状態を見極めた上で生活習慣の見直しをはじめとした治療を行って発達や連携を促します。

チェックするポイント
膀胱の大きさ

膀胱の大きさは、機能的膀胱容量と呼ばれます。機能的膀胱容量は、排尿日記や膀胱訓練で調べることができます。年齢相応の推定膀胱容量は、(年齢+2)×25 ミリリットルで導き出せます。

夜間尿の濃縮

寝ている間に尿が濃縮すると、たくさんの尿を膀胱がためられるようになります。起床後、最初の尿の比重や浸透圧を調べることで、濃縮の有無を確認できます。なお、抗利尿ホルモンは夜にたくさん分泌されます。そのため、夜中に起こして排尿させるのはできるだけ控えてください。

夜尿症診察の流れ

初診時

問診、腹部と仙骨部の触診、検尿、尿流測定検査、超音波検査などを行います。お子様にも負担のない検査です。こうした検査で、尿路奇形や基礎疾患の有無を確認します。

再診

早朝尿を採取して、ご持参ください。尿比重、尿浸透圧を測定して、夜間尿の濃縮の有無を確認します。その結果と、初診後からつけていただいた排尿日記、膀胱訓練の記録を参考に夜尿の病型を判定します。病型には、多尿型・膀胱型・混合型があります。

なお、治療中、治まってきていた夜尿が再発した場合や、悪化した場合には、再度の早朝尿検査と排尿日記の確認が再度必要になります。

よくある質問

本人の受診は必要?

治療対象になるのは学童期以降ですから、お子様本人が受診するためには学校を休む・早退する必要があります。そのため、本人なしで受診できないかご質問されることがよくあります。お子様本人が受診することで、より効果的な改善方法を見つけることができます。何より夜尿症の治療はお子様本人のやる気やモチベーションが重要になりますので、基本的にはお子様本人の受診が必要とお考えください。

薬を飲むだけで治る?

薬は治療を補助的にサポートするものです。夜尿症を治しやすい体質にするためには、生活習慣の改善をしっかり行わなければ薬の効果も十分に得られません。

本人が受診しない・薬だけに頼ってしまうケースでは、再発や悪化することが多くなっています。治療期間をいたずらに長引かせてしまわないためにも、いっしょにがんばりましょう。

本人の「治したい」気持ちが最も大切

診断夜尿症をしにくい体質にすることで治療可能になります。そのためには生活習慣を改善する地道な努力が必要です。飲食に関しての制限もありますので家族の協力も不可欠ですが、本人の「治したい」という気持ちが最も大切です。ただし、治したい気持ちがあっても8歳以上になっていないと注意事項を守るのは難しいと思います。また、強制や誘導で「治したい」と思わせてしまうのも厳禁です。

日常生活指導について

保護者の方に守っていただくこと

  1. むやみに起こさない
    睡眠中に起こしてしまうと、抗利尿ホルモンの分泌が悪くなるとされています。(ただし、夜尿アラームで刺激を与えるのは例外です。)
  2. 怒らない・叱らない
    お漏らしや夜尿は、怒る・叱ると逆効果です。ほめてあげられることをできるだけたくさん見つけ、大げさなくらいほめるようにしてください。
  3. 夕食は早めに
    できれば、就寝時間の3時間以上前に夕食をすませるようにしてください。
  4. 便秘しないように注意を
    食物繊維をしっかりとるようにしてください。また、乳酸菌も有効ですが、漬物は塩分が多いので避けましょう。

お子様本人への指導

  1. 日中は水分をたっぷりとる
    午前中にお水やお茶を500~1000ミリリットル飲みます。
  2. 日没(夏7時まで・冬5時まで)は水分をしっかりとってください
    スポーツや汗をたくさんかいた時には、その場できちんと水分を補給しましょう。
  3. 寝る前に排尿
    就寝前に必ずトイレに行って排尿します。
  4. 排尿日記をつける
    できるだけお子様本人が自分でつけるようにしてください。
排尿日記

夜尿の量は、「夜尿した後のオムツの重さ」から「もとのオムツの重さ」を引いた数値です。
我慢尿量、夜間多尿の有無や膀胱の大きさなどを調べることで、効果的な治療法につながります。

膀胱訓練

午前中に十分な水分を摂取して、夕方、帰宅してから就寝までの間にできるだけ排尿を我慢する訓練を1回行います。午前中の水分摂取量が少ないとうまくいきません。この訓練を毎日行って膀胱の容量を増やします。
ただし、昼間のお漏らしがある場合は、悪化してしまうため膀胱訓練を行うのは厳禁です。

薬物療法

日常生活の改善や制限をしっかり守れていることを確認した上で、お子様本人の気持ちも確認して行います。処方する薬剤に関しては、排尿日記や早朝尿浸透圧の結果を参考にして決定します。

ミニリンメルト®

夜尿症治療に最も多く使われている薬剤です。夜間の尿を濃くします。舌の上に置くだけで溶けるため、水がなくても服用できます。起こる可能性のある副作用には、水中毒などがあります。デスモプレシンスプレーRと違い、鼻炎がある場合も服用できます。

抗コリン剤

膀胱を大きくして、さらに膀胱の異常収縮を抑えます。これにより、尿を多くためることができるようになります。

三環系抗うつ薬(トフラニールR)

昔から使われてきた薬剤で、脳と膀胱への効果が見込めます。重症の不整脈を起こす可能性があることから、近年では他の薬剤で効果を得られない場合にのみ使用が検討されます。

漢方薬

神経質、病弱、寝ぼけ、冷え症、のどの渇きといった体質や原因に合わせた処方が可能です。ある程度の効果は期待できますが、服薬を止めてしまうと約40%が再発するとされていますので、しっかり治すためには生活習慣の改善などのコントロールが不可欠です。

条件づけ療法

夜尿アラームを使ったトレーニングです。ミニリンメルト®と夜尿アラームによる治療は、夜間の膀胱容量を大きくする・漏れる前に目覚める効果を期待できるため、夜尿治療の基本になっています。排尿はいくつかの中枢によってコントロールされていますが、夜尿アラームは橋にある排尿中枢のトレーニングに役立つとされています。
夜尿アラームは、本人の「治したい」気持ちと、ご家族の協力があってはじめて継続が可能になります。年長以上で、2週間に7日以上の夜尿がある場合に検討されます。

WEB予約
TOPへ戻る