男性の泌尿器科
男性の泌尿器科疾患では、排尿に関する症状が現れやすくなっています。頻尿・残尿感・排尿困難や排尿障害などです。また、陰部のかゆみや痛み、熱感、発熱などもよくある症状です。
前立腺や尿道に関係した病気をはじめ、男性に多い泌尿器科疾患についてご説明します。
ご了承ください
外陰部の掻痒感など皮膚のトラブルは皮膚科での受診をお勧めいたします。
そのような症状の場合には連携するクリニックへご紹介させていただくこともあります。お気軽にお尋ねください。
前立腺の疾患
精液の一部を分泌する生殖器で、膀胱の下にあって尿道を囲むように存在しています。大きさは栗の実程度で、精子を保護して栄養を与え、運動性を高める分泌液をつくっています。
前立線肥大症
加齢によって前立腺は肥大する傾向があるため、男性に多い疾患です。自覚症状に乏しいケースも多いのですが、尿道を囲む前立腺の肥大により排尿障害で気付くことがあります。
症状
軽い排尿障害が主な初期症状です。頻尿、夜中に尿意で目覚める、尿の勢いが弱くなった、尿意があっても尿が出るまでに時間がかかる、排尿に時間がかかる、残尿感でスッキリしないなどです。ただし、こうした自覚症状なく進行してしまうケースもあります。無症状のまま残尿が増加して慢性尿閉を起こしていることもあります。
診察
症状について問診でくわしくうかがって、検査を行います。前立腺肥大は、直腸診により前立腺の腫脹を確認することで診断できます。肥大がある場合はさらに超音波(エコー)検査で状態を確認して適切な治療につなげます。また、前立腺がんの合併がないかを調べるためには排尿状態を客観的に評価する必要がありますので、尿流量測定検査や残尿測定を行います。
治療
薬物療法と手術療法があります。薬物療法ではホルモン剤や尿道を広げやすくする薬剤を用います。排尿障害の程度が重い場合には、内視鏡による手術を検討します。電気メスやレーザーなどを用いた侵襲の少ない手術が主に行われています。
急性前立腺炎
前立腺が炎症を起こしている状態で、尿道から入ってきた細菌が増殖するなどによって生じます。
症状
38度以上の高熱、排尿痛、排尿困難、頻尿などが主な症状です。悪化すると尿が出なくなる尿閉を起こすこともあります。
診察
問診で症状などについてくわしくうかがいます。その後、尿検査で白血球数と細菌の有無を調べ、血液検査で白血球の数やCRPを確認し、直腸診により前立腺に熱感や圧痛の有無を調べます。
治療
抗生物質による治療を行います。内服薬の他に、点滴を用いることもあります。熱などの症状は治療開始から数日で改善しはじめますが、尿検査で回復が確認できるまでしっかり治療を続けないと耐性菌ができて治療が難しくなることがあります。必ず医師の指示を守って服薬しましょう。なお、炎症が強い場合には入院が必要になりますので、その際には連携している入院可能な医療機関をご紹介してスムーズに治療を受けていただけるようにしています。
包茎
包皮を簡単に剥いて亀頭を露出できる仮性包茎、包皮を剥くことが全く不可能な真正包茎、剥いた包皮で陰茎が締め付けられて包皮を戻せなくなった嵌頓包茎があります。嵌頓包茎は危険な状態ですから早急に治療が必要です。
真性包茎
包皮を剥くことができない状態です。小児の包茎は経過観察や軟膏治療により自然に治ることが多くなっています。炎症を繰り返す場合には、小児の場合も手術の検討が必要になります。無理に剥くと嵌頓包茎になることがありますので、心配な場合は受診してご相談ください。
成長しても完全包茎で剥くことができないと性交渉に支障が起こりやすく、さらに陰茎がんリスクが高くなるため、手術が必要になります。
仮性包茎
通常は包茎状態でも、包皮を剥いて亀頭を露出できる状態です。仮性包茎では、無理に翻転させるとカントン包茎を起こす可能性がありますし、炎症を繰り返す場合があります。場合によっては手術が必要になることがあります。
嵌頓(かんとん)包茎
剥いた包皮が陰茎を強く締め付けて、包皮を戻せない状態です。締め付けられた先に血液が届かなくなる循環不全を起こすと、痛みや腫れを起こし危険です。包皮を戻せない場合は緊急手術を行う必要がありますので、できるだけ早く受診してください。
泌尿器のがん
泌尿器には、膀胱がん、腎細胞がん、腎盂尿管がんが生じることがあり、男性の場合は前立腺がん・精巣がんが生じることもあります。男性は特に前立腺がんが多いため注意が必要です。泌尿器のがんも早期発見できれば心身への負担が少ない治療が可能ですし、生活やお仕事への支障を抑えて治せる可能性が高くなります。違和感程度でも気になる症状がありましたらご相談ください。
前立腺がん
もともと欧米に多い前立腺がんでしたが、ライフスタイルの欧米化によって日本でも近年増え続け、男性に最も発症が多いがんになっています。前立腺の外側にがんが生じやすい傾向があるため自覚症状が出にくいのですが、現在はPSA(前立腺特異抗原)という高い精度を持ったスクリーニング検査やMRI検査の普及により、早期発見されるケースが増えてきています。
症状
前立腺がんができても尿道の圧迫が起こりにくいので、自覚症状が現れにくいという特徴を持っています。早期発見されるケースは無症状で受けた人間ドックなどのPSA(前立腺特異抗原)検査によるものがほとんどです。
進行すると頻尿、排尿困難、排尿障害といった症状を起こします。こうした症状は前立腺肥大症でも起こるため、正確な鑑別が必要です。鑑別には採血によるPSA(前立腺特異抗原)検査が有効です。
診察
問診で症状についてくわしくうかがいます。検査は、直腸診、そして採血によるPSA(前立腺特異抗原)検査を行います。直腸診では硬いしこりが触れない場合は、経直腸超音波検査やMRI検査を行います。さらに、精密検査が必要と判断された場合には針を刺して前立腺組織を採取して調べる前立腺生検なども行います。なお前立腺生検を行う場合は近隣の基幹病院に紹介させて頂きます。
がんが発見されたら骨シンチグラムやCTなどで転移の有無を調べて進行度を確認します。早期前立腺がんは、骨やリンパ節などに転移が起きていない状態です。
治療
早期前立腺がんの場合、手術や放射線治療を行います。こうした治療による10年生存率は90%以上とされています。進行がんは3~5年と考えられていますが、転移の状態によって大きく変わってきます。治療内容は進行の状態だけでなく、年齢や基礎疾患などに合わせて行います。主に、内分泌療法・根治的前立腺全摘術・放射線療法・高密度焦点式超音波治療(HIFU)などがあります。なお、HIFUは保険適用されていません。
内分泌療法
男性ホルモンの分泌や働きを抑えて前立腺がん細胞の増殖を抑制する治療法で、注射や内服薬を用います。主に、進行性前立腺がん、手術適応されない前立腺がんに行われています。最初の内分泌療法は有効率80%以上とされていますが、一部が治療抵抗性となって進行する可能性もあるため、治療後も定期的に慎重な経過観察が必要です。
根治的前立腺切除術
主に75歳以下の患者様に行われる根治治療です。腹腔鏡やロボットを用いた手術など、侵襲が少なくお身体への負担が少ない手術が増えてきています。術後に尿失禁や勃起不全を起こす可能性があります。
放射線療法
外部照射や組織内照射による根治的治療、進行前立腺がんの進行抑制のための転移部位への照射などに用いられます。75歳以上でも行えるため、幅広い方の治療が可能です。照射後、尿失禁や排尿障害を起こす可能性があります。
高密度焦点式超音波治療(HIFU)
保険適用外の治療法です。超音波を照射して目的部位を熱凝固壊死させる治療で、早期前立腺がんに行われます。直腸から挿入したプローブによって行えるため低侵襲でお身体への負担が少ないのが特徴です。治療後に排尿障害や直腸損傷などを起こす可能性があります。
膀胱がん
早期に血尿という自覚症状が現れることが多く、早期発見しやすいがんです。痛みはないことがありますが、見た目で血尿とはっきりわかりますのでできるだけ早く受診してください。血尿以外では、頻尿、残尿感といったさまざまな排尿障害が現れることもあるため、膀胱炎だと思って受診して発見されるケースもあります。進行すると尿管の出口が塞がれ、尿が腎臓にたまって水腎症を起こし、背中の痛みを生じることもあります。こうした症状に気付いたらすぐに泌尿器科を受診してください。
腎細胞がん(腎がん)
腎臓は血液をろ過して尿をつくっていますが、腎細胞がんでは尿をつくるための尿細管細胞にがんが生じています。男性の発症が多い傾向があって、高血圧、肥満、喫煙などにより発症リスクが上昇し、60歳以上の発症が多いとされています。また、腎不全や特定の遺伝子異常などの影響も受けると考えられています。
早期には症状に乏しく、血尿などをきっかけに発見されることもありますが、検診などで受けた検査でたまたま発見されるケースが多くなっています。
進行した場合も症状がほとんどないケースもありますが、肉眼でわかる血尿、腹部のしこり、発熱、食欲不振、体重減少、貧血、腎機能低下、白血球の異常な増加(多血症)、高カルシウム血症、高血圧などが現れることもあります。転移した先でがんが発見され、その後の検査で腎細胞がんが発見されるというケースも珍しくありません。
腎盂尿管がん
腎臓でつくられた尿を集めて尿管に送り出すのが腎盂で、腎盂から膀胱までの間にあるのが尿管です。腎盂や尿管内壁の尿路上皮細胞のどちらか、あるいは両方ががん化したものが腎盂尿管がんです。尿路上皮細胞は膀胱内壁までつながっているため、膀胱がんが同時、あるいは治療後に発生することもあります。
男性に多く、60歳以上の発症率が高い傾向があり、喫煙は危険因子ですが、発生原因はまだよくわかっていません。
男性は女性の3倍発症しやすく、60歳以上の発症率が高い傾向があり、検診などで受けた検査でたまたま早期発見されることも多くなっています。
肉眼でもわかる血尿を早期にも起こすことが多く、血尿では血液の塊のようなものが出ることもあります。こうした塊が尿管を塞ぐと水腎症を起こして背中が痛むこともあります。こうした症状があったらできるだけ早く泌尿器科を受診しましょう。
精巣がん
陰嚢の左右に精巣が1つずつあります。精巣は精子をつくって男性ホルモンを分泌する役割を担っています。精巣がんは、精子をつくる精母細胞から発生するものがほとんどを占めると考えられていて、若い世代の発症が多い傾向があります。幼少期(5歳以下)、青年期(20歳代後半から30歳代)、壮年期(60歳前後)に発症のピークがあり、発症頻度は年間で10万人に1人程度です。予後が比較定期良好であり、リスク要因には乳幼児期の停留精巣などが指摘されていますが、発生の原因はまだよくわかっていません。
痛みを起こすことがほとんどないため進行するまで気付かないケースが多くなっています。片側の精巣が腫れる、急激に大きくなる、硬いしこりがある、軽い違和感があるなどで気付くこともあります。
精巣がんは転移している段階でも根治できる可能性が高いので、違和感などに気付いたら早めに泌尿器科を受診してください。